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クウ動物病院 動物内視鏡医療センター  TEL: 06-6967-8668
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腹腔鏡下胆嚢摘出術

内視鏡を用いた胆嚢摘出術

腹腔鏡下胆嚢摘出術の適応

腹腔鏡で行う胆嚢摘出術は開腹術と同様の目的で行われます。胆泥症をはじめとする犬の胆嚢疾患・胆道系疾患において外科手術が適応とされる時期に関しては確定されたガイドラインはありません。もちろん胆石による閉塞、疼痛、胆嚢炎など強い症状がある場合にはほとんどの患者さんで外科手術が必要になります。症状を伴わない胆嚢粘液嚢腫、胆泥症、胆石症などでは患者さんの症状と検査結果など総合的な判断が必要です。ただ、強い炎症を伴っている場合などでは外科治療に伴う合併症や予後(手術の成果)はあまりよくない点もあり、重症にならない段階での摘出がすすめられます
内視鏡手術(腹腔鏡手術)では傷が小さく、患者さんへの負担も少ないために開腹手術よりは選択しやすく、手遅れになる前に手術を行うこともあります。しかし、重度の胆嚢炎を伴ったり、胆嚢破裂による腹膜炎が存在する場合は内視鏡手術の難易度が上がるために適応とされない場合もあります。どの程度の炎症、肝臓の癒着において適応されるかはその医療機関によって異なるために担当医と相談することが必要となります。

腹腔鏡下胆嚢摘出術の術式

いくつかの術式が存在しており、その方法によって異なります。一般的な手術場合には4箇所(から5箇所)のポートと呼ばれる小さな傷からトロッカーを挿入し手術を行います。一つの傷は5−10㎜ぐらいですが、胆嚢を摘出する場所が必要なため1箇所はやや大きくする必要があります。多くの場合手術には3名程度の術者と助手によって行われます。
胆嚢は脆くなっていることも多いため、繊細な手術が必要とされます。左右にもった鉗子と呼ばれる器具を使って胆嚢の処置を進めます。また、お腹の中では電気メスや超音波切開凝固装置など血管を処理する装置を用いて出血を抑えながら手術を進めます。また時には特殊なクリップで管を閉じることになります。

腹腔鏡下胆嚢摘出を受ける犬

お腹の中にカメラと数本の鉗子と呼ばれる手術器具をいれます。写真の中央にあるのが胆嚢です。胆嚢の周囲には赤い色の臓器が存在していますが、これが肝臓です。胆嚢は右葉と方形葉と呼ばれる肝臓の部位に挟まれて存在しているために写真では中央に胆嚢がみえます。胆嚢の下にある臓器は胃です。胃は比較的大きな臓器でお腹の中で動くために手術の時に邪魔になってしまうこともあります。右と左から出て来いている黒い”棒”が鉗子です。この写真で使っているのは直径が5ミリメートルの器具になります。右手と左手で操作しながら手術をすすめていきます。

犬の胆嚢

腹腔鏡下胆嚢摘出術の特徴

腹腔鏡手術では開腹手術に比べて手術の難易度は上がってしまうため、適切な技術力と経験が必要とされます。しかしながら、写真で見て頂けるように非常に鮮明にお腹の中を観察することが出来るために構造を細かく確認しながら手術を進める事が出来ます。また、胆嚢は体の奥に存在しますが、腹腔鏡手術ではカメラを体の奥深くにすすめて観察することが出来るために肝臓の構造、胆嚢の状況、胆管や血管など処理が必要な臓器をしっかりと処理することが出来ます。

体の奥に存在する胆嚢ですが切除するためにはさらに根元にある胆嚢管と呼ばれる管を閉じて摘出を行わなければありません。開腹手術で行っていた場合では胆嚢を肝臓が外してから根元を確認し、その後に糸で縛る必要がありました。しかし、腹腔鏡手術ではカメラを用いてその管を最初に確認し、クリップと呼ばれる器具を使って早期に閉じることが可能になりました。同時に非常に細かな観察が出来るようになったために血管や他の組織を丁寧に扱い、損傷を最小限にすることを可能とします。写真では胆嚢管と胆管(肝臓からの管)、肝静脈、門脈などを観察しています。銀色の器具は電気メスの一種ですが先端の太さは2ミリ程度でありますが、比較しても周囲臓器の細かな観察が出来ています。

犬の胆嚢管
犬の胆嚢

術後経過

手術後はしっかりと経過を観察する必要があります。全身状態の状況によって合併症の発生状況は異なりますが、翌日までは状態が変化しないと注意深く観察をさせて頂いています。翌日に血液検査を行い、合併症や問題がないかを確認します。その後は経過によって退院をご相談します。
術前の全身状態や合併症の有無、どのような病気で手術をしたかによって異なりますが順調な回復が認めれる場合には手術翌日に退院して頂くことも珍しくありません。退院後は無理のない範囲での一般的な生活をして頂き、一週間後に再度診察、検査をさせて頂き抜糸となります。

一般的な術式ではお腹に3−4箇所の傷が残ります。1つだけは胆嚢を摘出しますのでやや大きな傷となります。患者さんの体の大きさや胆嚢のサイズにもよって異なりますが、小型〜中型犬であれば12−20㎜程度の切開は必要となります。他の2−3箇所の傷は3−5㎜程度になることが一般的です。
お腹の中心に大きめの傷、残りは左右に3箇所確認できます。

犬における腹腔鏡下胆嚢摘出後の傷口
術後の傷(1例)

重度の胆嚢疾患

胆泥症や胆嚢粘液嚢腫では症状がない場合も珍しくありません。そのために経過観察ということで発見されてから時間がたってしまうこともあります。しゃべることの出来ない動物では明らかな症状がない場合でも病気は進行していることもあります。胆泥症や粘液嚢腫の進行や胆嚢炎の合併があると胆嚢は強い炎症を引き起こし、状況によっては組織の壊死がおこります。ひどい場合は胆嚢破裂と呼ばれる胆嚢の損傷がおこり、中身(胆汁)がお腹に漏れてしまいます。そのタイミングで痛みがあるはずですが発見が遅れてしまいお腹の中に強い炎症が引き起こされてから嘔吐や下痢、続いて黄疸や肝臓の炎症などによる食欲不振で病院に来られます。検査では非常に大きな異常を呈し、緊急的に手術で炎症部位を切除しなくてはならなくなってしまいます。

写真の患者さんは強い炎症(腹膜炎)をおこしています。肝臓は黄色く変色し、全体的に腫れています。中心にあるべき胆嚢は見えず、肝臓や腹膜などと強い癒着をおこしています。またこの写真の上や奥には横隔膜がありますが、胆嚢と肝臓がボール状になってへばりついてしまっています。このような状況は深刻であり、積極的な外科治療が必要です。このような重度の病気では開腹手術でも難しくなりますので腹腔鏡手術で全て行うことができるとは限らなくなってしまいます。ただ、体力的にも衰えていることを考えると少しでも負担の少ない腹腔鏡手術で行うことで回復への少しでも繋げることが出来るかも知れません。このような重度では飼い主さんと綿密な相談をした上で手術を行っています。このような状況になる前に発見、治療が行えるように当院では診断や治療をお勧めしています。

癒着を起こした胆嚢

開腹手術による胆嚢摘出術

全ての患者さんで内視鏡/腹腔鏡を用いて手術ができる訳ではありません。重度の癒着や出血をしている場合、胆石によって管が詰まってしまっている場合などでは残念ながら腹腔鏡手術を適応することができません。そのため、病期などその患者さんの状況によって開腹手術なのか腹腔鏡手術なのかをご相談させて頂いています。
開腹手術の場合、体の奥にある胆嚢を摘出するためには大きな切開が必要になります。また、重症の場合では組織に与えるダメージも大きいために入院期間も長くなる傾向があります。

開腹手術による胆嚢摘出

胆泥症、胆嚢粘液嚢腫、胆石症、胆嚢炎など胆嚢疾患に関して、もしくは腹腔鏡下胆嚢摘出術に関しては当院までご相談ください。

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